写真:私も奨学金合格の連絡は嬉しかった
昨日、コルヴィヌス大学のプレパラトリーコースに在籍していた日本人生徒から「奨学金受かりました!」と連絡が入った。
大学の合格発表はだいぶ前に出ていたので、ずっとハンガリー政府奨学金の最終審査待ちだった。なんて親孝行なんでしょう。めでたしめでたし。
なので、たまには公共の利益になりそうな情報を書いてみる。
素敵な奨学金制度 Stipendium Hungaricum について、いろいろまとめてみた。
※ 大学出願プロセス詳細は以前の記事
ハンガリー政府奨学金 Stipendium Hungaricum は、ハンガリーのNPO法人(1996 年設立)、Tempus Public Foundation という組織によって運営されている。
なので、大学入試とハンガリー政府奨学金 Stipendium Hungaricum は全く別の選考過程である。
また、基本的にこの奨学金制度は、ハンガリーと各国が結ぶ、2国間協定によるものなので、それぞれの国へ奨学金の枠が割り当てられるという quota 制に近い。
つまり、毎年決められる総予算に応じて、全体枠が決められ、それに準じて、各国の2国間協定に基づき、枠が割り当てられるという具合だろう。
各国へのStipendium Hungaricum の割り当て枠
例えば、オマーンのハンガリー大使館の公式サイトでは、オマーンには 50 の枠が与えられると説明がされている。
"The Sultanate of Oman is currently provided with 50 scholarship places per academic year."
(オマーン・スルタン国には現在 50 の奨学金枠が各年度与えられる)
パキスタンは最大 200 枠。(在パキスタン ハンガリー大使館HP)
ロシアは 200 枠。(2024/25の枠数:在ロシア ハンガリー大使館HP)
ウクライナは 100 枠。(在ウクライナ ハンガリー大使館HP)
では日本はどうか。
”2013 年には、文部科学省とハンガリー人材省との間で交わされた覚書に基づき、日本人学生 100 名を対象とした奨学金プログラム「Stipendium Hungaricum」がハンガリー政府により創設された”
※ 引用元:ハンガリー概況 令和2年6月 在ハンガリー日本国大使館, P20(3)文化関係
この 100 名という数字が現在も保たれているかの公式な情報は見つからないが、現在もこの覚書に書かれた数字がひとつの基準であろう。
グラフ:年度別 日本国籍学生のハンガリー政府奨学金 受給者合計
※ Tempus Közalapítvány(Tempus Public Foundation), Stipendium Hungaricum programhoz kapcsolódó statisztikák, Stipendium Hungaricum ösztöndíjas külföldi hallgatókra vonatkozó statisztikai adatok 2015-2025(ハンガリー奨学金受給の外国人留学生統計データ)より筆者作成
ただ、Tempus Public Foundation が公開している統計データ(オリジナルは教育局高等教育情報システムOSAPによる)によると、奨学金を受給中の日本人学生数は、上のグラフのようになる。
大学院は2年、医学部が6年、一部の専攻で3年半や4年があるが、ほんとんどの学部は3年間ということを考えると、全学年合わせた合計が 182 人(2025/26年度)しかいないということは、先述の2国間協定の数字が今も 100 枠だとすると、その枠はフルで満たされていない可能性が限りなく高い。
Stipendium Hungaricum の選考過程の構造
ハンガリーの大学へ Stipendium Hungaricum を通して選考へ進む場合、入試構造はおおむね以下のようになる。
1.Tempus Public Foundation が運営母体の Stipendium Hungaricum の書類審査
2.出願した各大学による審査(大学入試)
3.大学入試を通過した志願者の Tempus Public Foundation による最終審査
4.大学による Recognition Process(大学入試合格者の入学資格の最終審査)
大学による志願者の審査と、奨学金の審査は独立した構造となっている。
つまり大学合格 ≠ 奨学金合格ということ。
※ 奨学金制度への申請は、専用の出願HPへ個人情報を登録することから始まる。
しかし、過程1に進める志願者の選抜から行われる国もある。
Stipendium Hungaricum のHP上では、ハンガリー政府奨学金制度への志願者の責任を持つ各国の機関を 「Sending Partner」と呼んでいるが、国によってはまず、国内機関へ書類を提出して選抜が行われる。
私のルームメイト(インド人)はこのパターンである。
日本はというと、このページで「Japan」を選択すると、「Sending Partner」へ申請は必要ない旨がページ下部に記載されている。
つまり、日本人の申請者は直接この出願サイトから個人個人で申し込めということである。
ちなみに上述の Sending Partner について確認できるウェブページでは、奨学金の対象となる学部群も確認できる。
(これも国によって違う)
Stipendium Hungaricum の出願者数
そうして個人で申し込んだり、国内選抜を勝ち抜いてくる世界全体の出願者数は、Stipendium Hungaricum の公式HPによると、年度を追うごとに増加傾向である。
2023/24 選考:約 57,000 人
2024/25 選考:約 66,000 人
2025/26 選考:約 80,000 人
2026/27 選考:約 110,000 人
現在 10,000 名を超える留学生が Stipendium Hungaricum を受給しながらハンガリー国内で勉学に励んでいる。
これは、ハンガリー国内 30 の高等機関に在籍する奨学金受給学生の合計数なので、2026/2027 選考が約110,000 の志願者数というのは、大変な競争率であることが容易に想像できる。
※ 数字は Stipendium Hungaricum のウェブサイトより
ではその出願者は選考過程でどう絞られていくのか、私が受験した2024/2025年のコルヴィヌス大学の同選考過程を例に見る。前出の入試構造の順にすると、
過程1:Tempus Public Foundation による審査
↓(約 7,000 人が通過)
過程2:コルヴィヌス大学による入試
↓(約 600 人が通過)
過程3:Tempus Public Foundationによる審査
↓(約 300 人が通過)
過程4:大学による Recognition process
という出願者の絞られ具合だった。(数字は当時の大学側開催のウェビナー資料による)
この年度の、奨学金制度を通してのコルヴィヌス大学出願者の Tempus Public Foundation による1次審査を通過した志願者の約 4.2 %が晴れて奨学金を認可されたと、数字上はそうなる。
奨学金受給者は、初年度ハンガリー語の授業が必修なので、2024/25年度セメスター1のコルヴィヌス大学のハンガリー語の授業の在籍人数を Neptun で確認すると 154 人だった。
これは、過程3で実際は 300 人合格させたが、併願している他国の奨学金を選択した、もしくは単純にハンガリー国内の別の大学に決めた、等の理由で約半分にまで減った。
はたまた、約 300 人は予定数なので、そもそもこの年度は充足しなかった。
などが考えられるが、本当のところはわからない。
下のグラフで 2024/25 在籍者数を確認すると、669人なので、そのうち154人が新入生というのはおおむね妥当な数字に見える。
グラフ:コルヴィヌス大学在籍のハンガリー政府奨学金受給者数
※ Tempus Közalapítvány(Tempus Public Foundation), Stipendium Hungaricum programhoz kapcsolódó statisztikák, Stipendium Hungaricum ösztöndíjas külföldi hallgatókra vonatkozó statisztikai adatok 2015-2025(ハンガリー奨学金受給の外国人留学生統計データ)より筆者作成
だが、前述のとおり、日本人の枠は満たされていない可能性が高いので、最初の書類審査、大学入試を通過すれば、奨学金が認められるチャンスは大いにあると考えて良さそうだ。
ちなみに、落選してしまって自費入学したとしても、在学中に再度チャレンジもできる。
その場合は、在学中のある一定以上の成績や、所属大学の推薦状が必要など、入学前と要項は変わってくる。詳しくはこちら。
各大学のハンガリー政府奨学金受給者数とその割合
ハンガリーの総合大学は、国の人口規模(約 950 万人)に対して、非常に大きな大学が多い印象だ。
例えば、私が在籍するコルヴィヌス大学は約 8,000 名(うち留学生約 2,000 名)だが、
セゲド大学:約25,000名(うち留学生約 5,000 名)
BME:約20,000名(うち留学生約 3,000 名)
ペーチ大学:約25,000名(うち留学生約 5,700名)
ELTE:約35,000名(約 4,600名)
デブレツェン大学:約34,000名(うち留学生約7,800名)
※ それぞれの数字は各大学の公式HP(2026年6月現在)より抜粋:各大学数字の丸め方にバラツキがあるため、傾向分析のための数字として使用(BMEのみ2023年のBME IN FACTS AND FIGURESより抜粋の数字)
と、かなり規模の大きい大学がある。
そして、下のグラフを見ると、概ね、大学規模の大きさ順にハンガリー政府奨学金受給者数が割り振られているように見える。
グラフ:高等教育機関別のハンガリー奨学金受給者数上位6機関(2025/26)
※ Tempus Közalapítvány(Tempus Public Foundation), Stipendium Hungaricum programhoz kapcsolódó statisztikák, Stipendium Hungaricum ösztöndíjas külföldi hallgatókra vonatkozó statisztikai adatok 2015-2025(ハンガリー奨学金受給の外国人留学生統計データ)より筆者作成
しかし、ハンガリー政府奨学金は留学生むけの制度なので、次に大学規模ではなく、留学生の数に注目して比較してみる。
前述のように、各大学のHPから抜粋の留学生数は各大学によるざっくりな数字なので、傾向だけを確認する。
グラフ:各大学の留学生数
奨学金受給者数同様、デブレツェンが一番留学生が多く、コルヴィヌスが一番少ないのは変わらず、その間の大学で、多少変動がある。
では、その留学生のうち何%がハンガリー政府奨学金を受給しているかの割合を見る。
グラフ:大学別留学生のハンガリー政府奨学金受給者の割合
割合ではコルヴィヌスがデブレツェンを逆転した。
なかなか興味深い数字である。
上位3番までの、ELTE、BME、コルヴィヌスはいずれも首都ブダペストの大学であるが、各大学が開校する学部系統は様々で、各国へ与えられる枠内の奨学金適用学部系統も国ごとに違い、複雑な関係を構築するため、この割合結果からああだこうだとは言えない。
しかし、ブダペストのこの3つの大学に通う留学生は、高い確率で Stipendium Hungaricum の受給者である(3人に1人以上)と言える。
その理由は色々想像できそうだが、今手元にあるデータからはこれ以上議論できない。
次のグラフは、この記事の本筋とは関係がないが、上述の数字を使用して、単純に各大学在籍者数のうちの留学生の割合を算出したものである。
グラフ:各大学の全生徒数に対する留学生の割合
そういえばこのグラフを作成する今まで、すっかり忘れていたが、私がコルヴィヌス大学を選んだ理由の一つは、この留学生の割合の高さである。
奨学金給付制度の内容
このブログでも散々書いてきてるし、公式HPのこのページに書いてあることがすべてだが、一応記載しておく。(BAとMAむけ)
・授業料の免除
・給付金制度(HUF43,700/月)
・住居むけ給付金(HUF40,000/月)
・社会保険
これらはセメスターごとに更新手続きが必要である。(一部例外あり)
格安の大学寮に住めば、住居向け給付金でほぼ相殺できるので、生活費(食事、交通費、通信費、雑費)しか必要ない。
寮の契約切れの度に、私は大学寮に必死に応募するが、競争率はそこまで高くない。
一番の理由は建屋の古さだろうが、寮側もリノベを継続中でがんばっている。
が、日本人目線からすると、がんばり具合が多少ズレている気はする。
※ 唯一新しい大学寮は競争率は高く、部屋代も高い
結果、水場に嫌気がさしたりして、出ていく決断するのはおおいに理解できる。
しかし私はお金を使わないことの方が全然大事なので、大学寮ラブである。
ちなみに、入学後の給付継続要件は厳しくない。
・初年度にハンガリー語を履修し合格すること
・連続した2セメで最低 36 単位取得すること
・ハンガリー国内に居住のこと(長期間の無断出国は受給資格が失効)
・指定された期日までに指定の健康診断を受診すること
この辺は、守らないと一発で抹消されるため、大学入学時のオリエンテーションやら、資料展開などで、きっちり教えられる。
しかし、学業面に関しては、むしろ各大学が設定している要件の方が厳しいだろう。
そしてその要件は自分で調べなければならない。
Stipendium Hungaricum の出願タイムライン
大学によって日程が多少前後するが、ざっくり追うと以下のような日程である。
11月:初旬に Stipendium Hungaricum のApply online! への登録開始
1月:例年15日に Apply online! 出願締め切り
2月:下旬にTempus Public Foundation による書類審査結果が展開
3月:志望大学によるウェビナー
4月:面接やオンライン入試
5月:大学入試結果展開
6月:Tempus Public Foundation による奨学金最終審査結果展開
7月:大学から Unconditional letter が展開(正式に入学が認められる)
8月:末から9月初旬にかけてハンガリーへ渡航
上記の具体的内容はこちらの記事に詳しい。
私の場合は、8月に大学寮の入寮意思確認の展開があった。
見てわかる通り、日本の大学入試制度に比べると非常に長いタイムラインである。
重要なことは、このタイムラインをやり切ったことで、何かゴールした達成感に支配されることもあるかもしれないが、本来の大学開始がスタートラインであることを忘れないことである。
特に日本で言う、文系に該当する学部へ進学する者は、とにかく英語力の改善を渡航ぎりぎりまでやることだ。
私は初年度、「読む」「書く」には相当苦労した。(いまも克服したとは言えないが)
これらの速度が遅いと、「読んで」から「書く」、1週間の課題がそもそも終わらないのだ。
当たり前だが、講義にはリスニング力が必要だし、発言にはスピーキング力。
話がそれてしまったので、トピックを奨学金に戻すと、私はハンガリーの大学のどこに出願しようか各大学のHPを物色していた時、この奨学金のことをたまたま知ることになった。
このラッキーのおかげで、金銭面であまりプレッシャーを感じずに日々の生活必需品や、日本への渡航費へ費やすことができている。
留学先にハンガリーの大学を選んだ者であれば、こちらの奨学金の制度を通して出願するのは(結構大変だけど)トライする価値がある。

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