写真:広州にて(2014年)
いよいよ来週が3学期最終週というところまで来た。
こんなタイミングで、来学期、中国語のコースは開講されないことが決まりましたと、中国語の授業中に伝達があった。
聞けば、コルヴィヌス大学は中国語の他、仏語、伊語、露語、西語、アラビア語、ポルトガル語を閉講するという。
残るのは、英語、独語、ハンガリー語。
外国語講師たちも寝耳に水の決定で、英、独、ハンガリー以外の講師は、あと数週間でクビということだ。
仏語講師は目を真っ赤にして授業に現れたそうだ。
翌日には、生徒たちによる署名活動が始まり、そのURLがあらゆるSNS、大学メールに拡散された。私も署名とコメントをポストした。
木曜日には旧棟前で抗議のため学生が集まり、その後、外国語講師と大学運営側とミーティングが開かれたとは聞いているが、続報はない。
想像するに、既に決定した事項を講師たちに説明した、ということだろう。
(おそらく決定事項なので覆ることはない)
この大学はちょっと変わった運営方式なので、詳しく調べていつかそれについても書いてみたいが、今回この話題はこれくらいで。
China Studies は最終週である来週の講義時間中に Moodle 上のオンラインでプレテストが実施される。(講義への出席必須)
このテストで満足の行くグレードが取得できれば、その更に翌週の期末試験期間のテストは受験の必要がなくなる。
今期、終わってみれば、講師、講義内容全体で見ると、一番良かった科目かもしれない。
(講師の講義スタイル、講師の取り組み姿勢、講義内容など)
ただ唯一、講義スライドは不要な動作が多すぎて気に食わないが。
以下、10週、11週のまとめ。
人口動態(Demographics)
改革開放以降、1980年代~2010年代の中国の高度経済成長は、人口増加に支えられた要素も大きい。
1979年に一人っ子政策(One-child policy:2015年終了)を導入してから、15歳未満の人口割合は減り続け、対照的に65歳以上の人口割合が増加し始めた。
2050年には、65歳以上がおよそ25%、15歳~65歳未満が約55%、15歳未満が20%程度となると見込まれる。現在の日本ほどではないが、中国も着実に高齢化社会が進む。
※ 2100年には総人口が7億3千万まで落ち込むと予測(ナイジェリアにも抜かれる)
2022年、人口減少局面へ入り、労働力減、中国製品の価格競争の優位性は失われていく。
中国は、これまで extensive model(粗放型モデル)で、資本、労働力、土地など、より多くの資力を投入することで、成長を支えてきた。
今後は、intensive model(集約型モデル)を構築し、技術依存型へ移行する必要があるが、生産性⤴、給料⤴となり、競争力を維持できるだろうか?
→ サプライチェーンの上位に移動する必要
・Industry 4.0
省人化(ロボティクス)、AI、自動化・・・
しかし、
・債務負担(6ドルの債券で1ドルの成長しか見込めない状況)
・米国との Tech war
・実現を可能にする環境の欠如(lack of enabling environment)
※ 例えばシンガポールは、地政学的ハブ、英国との歴史的つながりのおかげで法整備や英語教育が充実、インフラ優秀、治安の良さなどからFDI(外国直接投資)を引き付ける、というように環境が整っている。
より民主的な国ほど、富める可能性が高い。(強い相関)
鄧小平(Den Xiaoping)は毛沢東(Mao Zedong)が構築した障壁を取り除いたにすぎない。
中国は体制上、決定は絶対的(dicisions are carved stone)だが、Zero COVID Policy でロックダウンをした際、局地的な抗議や暴動が発生。
急にロックダウンは緩和された。
中国は内部治安維持の費用が軍事費用を上回ることがあり、それほど内部治安に気をつかっている。
中国の経済的覇権は絶対的に続かないと考えられ、中国の米国に対しての優位性は一時的なものとなり、米国の覇権は続く。
しかし、このシナリオはより危険度が増し、米中の対決へと繋がる。
そして講義スライドはこう締めくくる。
政治家が権力の座に永遠に居座ろうとするとき:
・専門性より忠誠心を重視
・技術官僚(technocarts)は政治家に取って代わられる
・決定は絶対、失敗はあとからカバー、結果、発展は遅い
・強力な支援者の短期利権が、国家の長期利権を凌駕(trump)する
・現在の経済構造は、既得権益から中間層への再分配・構築を望まず、構造は石化
結果、現在の政治状況が変わらない限り、構造改革は望めない。そして、国際貿易とビジネスの領域で摩擦を生む。中国は大きな経済停滞を招き、国内・国際ともに劇的な政治的影響があるだろう。
中国の安全保障政策
中国の安全保障は、深い歴史的ルーツからくる。(台湾、北朝鮮)
そして、南シナ海、東シナ海とインド洋の領土主張の問題。
中国の軍事増強は東アジアのパワーバランスを変動させる。
最初に中国最初の空母、遼寧(Liaoning:CV-16)の写真を見せられた。旧ソ連(ウクライナ)から購入。船頭がホップした形状。(全長が短くてすむ)
写真:遼寧(出典:Wikipedia)
2隻目はこれのコピー、山東(Shandong:CV-17)。国産。
写真:山東(出典:Wikipedia)
3隻目は福建(Fujian:CV-18)設計から中国。
写真:福建(出典:Wikipedia)
地図:中国の東部海岸線は他国に囲まれる(出典:GoogleMap)
中国は数十年かけて世界中に築いたものを守る必要がある。
そのため、覇権が欲しい。
米国の評価によると、安全保障は:
・2049年までに国家の大幅な刷新(rejuvenation)を達成
→ 国力を増幅させ政治的、社会的、軍事的近代化と国際秩序の変革
・中国は米国を中国封じ込めに全力を尽くすとみている
などなど。
2019年の防衛白書では:
・攻撃に対する抑止と抵抗
・チベット独立や東トルキスタンなどの分離運動の取り締まり
・海上権利と利権の確保
・国家の持続可能な発展の援助
などなど。
Strategic Priorities of China:
1.分離防止による領土統合と国境係争の取り締まり
2.近隣を保全し地域紛争を避ける(北朝鮮)
※ 中国経済は非常に大きいので地域の安定に貢献するが、地域紛争は容易にそのサプライチェーンに影響する
3.米国同盟関係を弱め、代替関係を築くことで、戦略的封じ込め(strategic encirclement)や二正面戦争(a two-front wars)の回避
※ 海軍力が最も中国にとって重要
※ 二正面:例えば台湾有事と中印国境
4.インド-太平洋とユーランシア地域で、政治的影響力、海上アクセス、経済的繋がりを深化の拡大
※ 中国は原油輸入大国
a) to avoid encirclement
・ニコニコ外交(smile-diplomacy)
・increased economic influence
→ 世界中で相互依存を築く(戦略的に経済関係を強めている)
・strong US-China relations
→ 米国と関係を構築を目指す、関係のエスカレートはさせたくない
・What is more important to neighbouring countries:business or security?
→ 米国による安全保障(豪州、日本・・・)だったが、状況は変化
(米国は他国を守りたくない)
b) to avoid two-front wars
・minimising the possibility, while preparing for the worst
→ 中国は台湾有事に最も注力
・defensive military development
→ 中印国境に中国は軍隊を相当数配置
・preparing for a war with 1.5 fronts
→ two-front wars(二正面戦争)は中国も対応できない、主戦+限定的衝突程度に耐えられる軍事構造をつくる(外交・抑止で管理)
・focusing on naval capabilities
→ 台湾近海でミサイルを打ったら(李登輝が米国を訪問したため)米国のリアクションが強かった(1995~1996)
米国は空母2隻を台湾近海へ派遣
→ 中国はこれにリアクションするすべがない
・"showing hard power to create conditions for not using it"
→ 武力を実際には使わずにすむために、“武力を見せつける”
→ 造船能力は米国の240倍という推定値もあり、ドローン生産も世界最大
※ 台湾もドローンをポーランドやウクライナへ輸出しているが技術過剰(overtechnology)、銃で言えばカラシニコフのような単純な物が求められる
c) Taiwan
・harsh reactions to all Taiwan-US weapon deals
・China accepts the US-led unipolar World order... yet
・does not have invasion forces... but working on it
・its main goal to avoid the official proclamation of Taiwanese independence
One-China policy は、清朝時代、台湾に統治が及んでいたことから統一されるべきとしている。清朝時代をベースに露国土や、琉球も中国の一部と主張する(日清戦争の敗北により状況は一変)。
いかなる政治的な台湾訪問も、中国にとっては越えてはならない一線(Red line)。
米国の、1つの中国に対する公式見解は、中国の立場を「acknowledge」。日本語に訳すと「認知」とかになりそうだが、英語はそのイメージより弱い。
そもそも国民党が台湾に渡ったあと、蒋介石(Chiang Kai-Shek)は大陸再奪取したかったが、米国はどちらにも動かないで欲しかった。
→ Strategic Ambiguity(1970s~)戦略的曖昧さ
台湾がもし2つの中国や独立を宣言したら、中国は台湾を占領する。
→ 台湾が攻撃されたら、米国は援助するかもしれない(しないかもしれない)
台湾にもそういった行動の抑止となる。
Smart policy:投資・観光・貿易により相互依存(mutual dependency)をつくる
→ 台湾の中国への依存構造ができあがっている
台湾は民主主義レベルが世界で10位程度。
民主化が進んだ1994年前後から、台湾は独自のアイデンティティを構築しなければならなかった。1990年代以降の若い世代は、中華民国成立以前の中国本土との関係を直接体験していないため、「自分たちは台湾人」という意識が強い。
9割の国民は現状維持を望むとされる。
→ 中国側にとっては、台湾は統一のラストピース(ゆずれない)
d) Korea
・In reality all actors of the Korean conflict are interested in the status quo
→ 韓国:統一したくない(東西独の統一をはるかに凌駕する経済格差)
北朝:核を保持したので安心(米国から攻撃されないための保障)
日本:北朝の存在が米軍駐留のベストな言い訳に(本当は対中国)
中国:米体制による南北統一は見たくない(北朝は良きバッファゾーン)
※ 一方で、北朝鮮の攻撃的態度は中国の利権にも合致しない
北朝鮮はキム王朝の存続が目的なので、核先制攻撃の可能性は低い。北朝鮮が大陸間弾道ミサイル技術・核を持ったことで、米国も北朝鮮の二次攻撃(second strike)に対応が難しいので、わざわざ先制攻撃をしない。(ICBMの迎撃率:interception rate は50~60%)
ということで、朝鮮半島は安定状態である。
e) Securing energy needs
・naval development
・string of pearls strategy
・alternative energy sources
・alternative import partners
・alternative import routes
Senkaku Islands(尖閣諸島)
・ナショナリズム
・地政学
・尖閣を押さえるとより良いポジション
・天然資源
以上を主な理由として、中国は固執する。
南シナ海
地中海より広いこの海域は貿易ににとって非常に重要。
中国は各国の係争地域に軍事拠点構築。中国の軍事費は米国に次ぐ世界2番目だが、PPPベースだと、米国と同じだという報告がある。
カウンターレスポンスとして、アジア・オセアニア地域の軍事費は増加傾向。
(世界6地域で最も増加スピートが速い)
これで、すべての講義のまとめが終わったので、来週のテストに備えるのみである。
(それをもし落とすと再来週の期末試験)
チャイナスタディーの最初の投稿に書いたが、初週の講義の骨子として、
・中国は21世紀の覇者と成り得るのか
・世界秩序の変遷
というトピックに対し、比較データや歴史的背景などで補強し、講義の最終週にはこれらが生徒側にクリアになっている、という幹のある講義構成がとても素晴らしかった。




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